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第22話 止まらない妄想

last update Date de publication: 2026-05-13 08:16:59

 そのまま横に居続けたら、どうしても抑えきれなくなりそうで――トイレの狭い個室に駆け込み、自分の不甲斐なさを叩き潰した。まさに理性と本能の限界バトル。

 そして、必死に頭と下半身をクールダウンさせる。もしここで欲望に任せて動けば、彼に「結局、浅野さんは俺の体目的なんだ」と思われてしまう。それが何よりも恐ろしかった。

 それでも、どうしても勃つモノが勃ってしまい、白旗を上げた。意中の相手宅のトイレで、自分自身を収めるという、本人に知られたらドン引き間違いなしのシチュエーション。

 けれど、俺の下半身は今までにないくらい熱く屹立していた。恐ろしいほど下半身も馬鹿で素直だ。

 可愛い。

 可愛い。

 触れたい。

 あの大きな瞳で見つめられて、柔らかそうな白い肌に触れてみたい。

 いい香りのする髪に鼻を寄せて、その服の下に手を這わせたい。

『ん……やだ、浅野さん。……だめ、っ』

 俺の下で、彼はどんな風に組み敷かれて、恥ずかしがって、喘ぐんだろう。

 そんな妄想に耽りながら、多忙で抜いてなかったせいか――量的にも質的にもとんでもない一発を流すと、俺は寝室に戻った。

 そして、静かに眠る珠依さ
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    *** 記者会見から数ヶ月、嵐のような日々を乗り越えた先には、驚くほど穏やかで温かな日常が待っていた。 「フォトグラファーの浅野です。本日は宜しくお願い致します」 カメラバッグを背負い動きやすいラフな出で立ちの透利さんは、いつもの星空を見上げる時とは少し違う、柔らかな表情で施設に足を踏み入れた。 今日は俺の勤務先である乳児院に、仕事……撮影カメラマンとしてやって来ている。 「わー! 本物だ、おっきいカメラかっこいい~」 「みせてみせて! 私も写真撮りたい!」 ホールでおままごとをしていた子どもたちが、振り向いた先で挨拶をしていた透利さんに一斉に駆け寄る。 「透利さん、来てくれたんですね」 背中でおんぶしている赤ちゃんを優しくあやすように揺らしながら歩み寄ると、透利さんはカメラのレンズ越しに、とろけるような笑顔を向けた。 「珠依、お疲れ様」 「ごめんなさい。みんな、三日前からこんな調子で……テンションが高くて」 「謝ることじゃないよ。こんなに大歓迎されて、嬉しい以外のなにものでもない」 彼の足元では、幼稚園に通う年中・年長組の子どもたちが「それ、どうやって撮るの!」「星とか撮る人なんでしょ!」と、矢継ぎ早に質問を投げかけている。 透利さんは膝を折り、子どもたちと同じ目線まで沈み込むと、楽しそうにレンズの仕組みを教えていた。 今回の依頼は、建て替えを終えた乳児院のホームページを一新するためだ。本来は、児相と連携して身寄りのない子供たちを預かる場所。けれど、それだけでなく一時預かりや園庭解放など、地域に開かれた施設としての魅力を伝え、「可哀想な子供達が生活している場所」というマイナスイメージを少しでも払拭したい――というのが目的だ。 ホームページに載せる施設や職員紹介の写真を撮影するにあたって、会議でのカメラマン選定の話題になると、職員たちの視線が自然と俺に集まり、断りきれず透利さんに打診したところ……人を撮るのが苦手だと言っていたのにも関わらず、透利さんは二つ返事で快諾してくれた。俺が透利さんと正式なパートナーシップを結んでいることを伝えてからは、腫れ物に触るようだった雰囲気もどこか丸くなって、あたたかく受け入れてもらっている。 本来なら、透利さんの事務所では人物に関する撮影は引き受けていない。だ

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  • 元彼に「赤ちゃんが欲しい」と言われて、タオルをお腹に詰めてたら振られましたが、有名フォトグラファーの彼に愛されています♡   【番外編⑥】愛する人の家族

    「私たちはね、珠依くんにそんなふうに遠慮させるために、わざわざここに呼んだわけじゃないわ」 頭を垂れる俺の肩に、お義母さんがそっと手を添えてくれる。 その瞳には、これまでの苦悩を察するような切なさと、それ以上に深く包み込むような温かな慈愛が宿っていた。 「大事な息子が選んだパートナーが、心ない人たちにさらし者にされて、黙って指をくわえて見ているなんて……そんなこと、親としてできるわけがないでしょう? 今はまず、私たちができることとして、珠依くんが心から落ち着ける日々を過ごさせてあげたいの。お仕事のほうは、ちゃんと休みの手配はついているのかしら?」 「は、はい……。今まで年休をあまり使っていなかったので、残りをすべて消化するということで施設長とも話がついています」 「なら安心ね。万が一、ここまでパパラッチが嗅ぎつけてきたとしても、門のところで父さんがしっかり追い払うから。なんならアタシだって、熊手やシャベルを片手に、庭の番人として追い払ってあげるわよ!」 「母さん、それはさすがに野蛮すぎるわよ」 透花さんが苦笑して宥める横で、お義母さんは膝の上で小さく拳を握りしめている。 その姿には、透利さんと俺を守ろうとする強固な意志が表れていた。 「だって、許せないんだもの。こんなに痩せちゃって……! もう、本当に透利も透利だわ。『珠依くんを必ず守る』って、あんなに真っ直ぐな顔で私たちに誓ったくせに!」 お義母さんの溢れる憤りを聞き、胸が熱くなるのを抑えられない。 そんな中、向かいに座るお義父さんが、ふと穏やかな視線を俺に向けてきた。目が合うと、深々と目尻を下げて優しく微笑まれる。 「私も同じ気持ちだよ。記者がうろつくようなら、ホースで水を撒いて追い返してやろうかと思っていたんだ」 「ちょっと、父さんまで何言ってるのよ……。そんなことしたら、『過激な実父』なんて書かれてニュースになっちゃうわよ」 透花さんの二度目のツッコミにも、お義父さんはいたって真剣な表情を崩さない。 「異常だって? なんとでも言えばいいさ。守りたいもののために汚名を着るくらい、親なら当然の覚悟だ。世間がどんなに息子たちの幸せを面白おかしく書き立てたとしても、ここには変わらない生活と、家族の愛がある」 お義父さんは胸ポケットから一枚の紙をスッと取り出し、俺と透花

  • 元彼に「赤ちゃんが欲しい」と言われて、タオルをお腹に詰めてたら振られましたが、有名フォトグラファーの彼に愛されています♡   【番外編⑤】透利さんの実家で

    あの後、俺は周囲の喧騒を避けるように、透利さんの実家へと身を寄せることになった。 これからの一週間、慣れない環境に身を置くことへの緊張で、自然と顔が強張ってしまう。「珠依くん、お待たせ。さぁさぁ、早く乗って」 ちょうど長期休暇中だった透花さんが迎えに現れたのは、真っ赤な外車のオープンカーだった。 初夏の風を切るエンジン音が、閑静な住宅街でひときわ異彩を放っている。パパラッチの影に怯え、じめじめと湿っぽく沈んでいた俺の気分を吹き飛ばすように、透花さんは「アタシは何を書かれたって平気よ」と快活に笑い、アクセルを軽く煽った。「うわっ、透花さん、スピード!」 「大丈夫大丈夫、法定速度はちゃんと守ってるから! あっ、でもシートベルトはしっかり締めておいてね? あたし、トロトロ走る車はガンガン追い越していくタイプだから」 「う、あ、はいっ……宜しくお願いします」 俺が命を預ける思いでいつもより数段強くシートベルトを締め直すと、透花さんはサングラスの奥でいたずらっぽく目を細める。蛇行するように細い道を抜け、パパラッチの追跡を撒くように何度も鋭いハンドル操作を繰り返してから、高速道路の流入路へと一気に躍り出た。***「珠依くん、久しぶり。長距離移動でお疲れでしょう? さあ、ゆっくりしてね」 目的地に到着すると、玄関先にはお義母さんとお義父さんが温かな笑顔で待っていた。 久方ぶりの再会に、強張っていた胸の奥がふわりと緩む。車を降りて改めて見上げた透利さんの実家は、俺の想像を遥かに超えた邸宅だった。(……これ、本当に家、なのか……?) 重厚な門構えからして、俺の知る「一般家庭」の定義とは一線を画している。 整備された庭園の奥には、周囲の景観を圧倒するような、広大な平屋の屋根が横たわっていた。 ぽかんと開いてしまいそうな口を必死に閉じ、圧倒されるような思いでその佇まいを見つめ続けた。「こっちが透利の部屋よ。帰省のたびに片付けはしていたみたいだから、珠依くんの個室として使ってね。記者会見が終わったら、透利もこちらに戻ってくる予定だし……アイツが来る前に、こっそり卒業アルバムでもチェックしておいたら?」 透花さんにそう茶化されると、俺は「そんな!」と慌てて手を振って否定する。 けれど、内側では好奇心が疼いていた。学生時代の透利さん。知らない頃の彼を、

  • 元彼に「赤ちゃんが欲しい」と言われて、タオルをお腹に詰めてたら振られましたが、有名フォトグラファーの彼に愛されています♡   第10話 心の両価性 -アンビバレンス-

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  • 元彼に「赤ちゃんが欲しい」と言われて、タオルをお腹に詰めてたら振られましたが、有名フォトグラファーの彼に愛されています♡   第6話 ベビーベッドと揺れるメリー

    「……あ、あそこのマンションです。エントランスまでで大丈夫ですので」 指し示した先は、かつて早霧と選んだ、日当たりのいいマンション。「あそこですね。了解です」 浅野さんは軽快に頷くと、歩調を俺の痛む足に合わせてゆっくりと刻んでくれる。 早霧が出ていってから、この道はいつも一人だった。 冷たい風に吹かれ、孤独に耐えながら、ただ消えてしまいたいと願って歩く道だった。 けれど今、隣に他人の体温がある。 人形を抱く自分を「気持ち悪くない」と言い切り、片方だけの靴下を全力で届けてくれた、お人好しすぎる赤の他人の体温が。 エントランスに辿り着き、彼から重い荷物を受け取る。「本当に、助か

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    「あ……」 彼を見ると、そこには軽蔑も、気味悪がる色もなかった。 ただ、大切なものを届けに来た、ということを伝えてくれるような穏やかな表情。「ありがとう、ございます……」「いえ。靴下って、片方なくなっちゃうと結局買い直しになっちゃいますもんね」 はは、と至って普通の調子で笑う浅野さん。その屈託のなさを前に、俺は自嘲を隠せないまま、消え入りそうな声で問いかけた。「……気持ち悪くないんですか? 俺のこと」「え、どうしてですか?」 浅野さんは、本気で心当たりがないという風に首を傾げた。「どうしてって――客観的に見て、おかしいでしょう。大の男が、抱っこひもをして、中に人形を入れて歩

  • 元彼に「赤ちゃんが欲しい」と言われて、タオルをお腹に詰めてたら振られましたが、有名フォトグラファーの彼に愛されています♡   第4話 抱っこ紐の中身

    「……あの。俺、絆創膏は持ってるんで。せめて手当だけでもさせてもらえませんか? そこのベンチでいいので」 彼は桜の木の傍らにある古びた木のベンチを指差した。断る上手い口実も見つからず、俺は促されるまま、自転車を押して歩く彼と並んで腰を下ろした。「じ、自転車……キズとか大丈夫ですか? 俺がちゃんと前を見てなかったせいで、本当にすみません」 弁償とかしなきゃいけないかも、とチラリとその高そうな細いフレームの自転車を見やる。 けれど、男性は首を左右に振って否定した。「何言ってるんですか。自転車なんてどうにでもなりますけど、命に替えはきかないですよ」 困ったように眉を下げて笑うと、彼は近

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